招き猫先生の『ことちか日記』

招き猫先生の『ことちか日記』R4 2/14~16

先週の日曜日だったか、東京在住の知人Tさんから「本」を紹介された。
年間300冊の読書量を誇る所謂「意識高い系」のTさんが「ここんとこ読んだ本の中で一番!」とまで言っていたので、取りあえず読んでみようかなと取り寄せた。

タイトルが「運転者」、タクシードライバーの話かなと読み始めた。
確かに、タクシードライバーは登場するのだが、予想に反して、主人公は、保険会社の営業職の中年サラリーマン。営業ノルマに追われ、家族のことなどにも悩みを抱えている。紹介してくれたTさんも保険会社に勤めている※からよりリアルに感じたのかなと思いつつページをめくった。

※吾輩注 ちなみにTさんはノルマに苦しむどころか巨大な外資系保険会社に勤め、世界的な表彰を受けるほどの敏腕営業マンである。

さて、運転者とは「運を転ずる者」ということらしい。
運転者は、悩みを抱えて不機嫌な主人公に語りかける。

運が劇的に変わる時、そんな場というのが人生にはあるんですよ。
それを捕まえられるアンテナがすべての人にあると思ってください。
そのアンテナの感度は、上機嫌のときに最大になるんです。
逆に、機嫌が悪いと、アンテナは動かない。
だから、最高の運気がやって来ているのに、すべての運が逃げていってしまうんです。

このへんまで読んだとき、「明日から何が何でも上機嫌で生活するぞ。」と心に誓う単純・短絡な吾輩であった。お話はまだまだ続く。

自分の人生にとって何がプラスで何がマイナスかなんて、
それが起こっているときには誰にもわかりませんよ。
どんなことが起こっても、起こったことを、
自分の人生において必要だった大切な経験にしていくこと、
それが「生きる」ってことです。
長い目で見たら、報われない努力なんてありません。
あまりにも短い期間の努力で結果が出ることを
期待しているだけです。

そこにあなたが生まれ、ほんの百年ばかり生きて死んでいく、そのときです。
あなたがその物語に登場したときよりも、
少しでも多くの恩恵を残してこの物語を去る。
つまり、あなたが生きたことで、少しプラスになる。
それこそが真のプラス思考じゃないかと思うんです。

非常に読みやすい内容でこのあたりまでスラスラと読みつつ、「なるほど、こんな考え方があるんだなぁ。」とは思いつつも、「ここんとこ読んだ本の中で一番!とまではなぁ。」という印象であった。

運は「いい」か「悪い」で表現するものじゃないんですよ。
『使う』『ためる』で表現するものなんです。
先に『ためる』があって、ある程度たまったら『使う』ができる。
運は後払いです。何もしていないのにいいことが起こったりしないんです。
周囲から「運がいい」と思われている人は、たまったから使っただけです。

というあたりを読んだとき、作中の主人公同様に「でも何も運がたまるようなことしていないのについている人とか、幸運に恵まれている人もいるんじゃないかな?」と考えてしまう吾輩であった。

ネタバレするのでこれ以上は記さないが、クライマックスに近づくにつれて、その疑問に対する作者の解答も描かれている。随所に散りばめられた布石からラストにつながっていくストーリー展開が心地良い。

小一時間であっさり読めるボリュームである。
読後感は爽やかであった。いい映画を見た後のような感じである。
齢50でこの世を去った父親※のことを思い出した。

※吾輩注 いろいろな学びのある一冊であったが、今回一番有り難かったのはこれである。

本日はここまで。

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